受注は何で決まるのか?
下図(受注プロセスの全体像)をご覧ください。これはものづくり企業を念頭に描いた、受注プロセスの全体像です。左側にマーケティング活動が4つ、そして右側にセールス活動がステップ毎に記載されています。

1.新規開拓
営業パーソンが自分の営業活動の延長として、リードを探す活動です。紹介営業などが典型例になります。
2.リスト(メール)マーケティング
疎遠になった休眠客や見込客等、リスト化された顧客にメールを送付し、リードを獲得するマーケティング活動です。
3.展示会マーケティング
展示会にブースを出し、名刺交換を通じてリードを獲得するマーケティング活動です。
4.Webマーケティング
ネット広告やSEO(検索エンジン対策)を通じて自社サイトにアクセスを集め、そこから資料請求等でリードを獲得するマーケティング活動です。
5.セールス活動
リード獲得後、アポイント取得、初回訪問、テスト(見本、試作、デモ等)、見積と4つのステップに分かれます。
以上5つが受注プロセスの全体像となりますが、この中で受注率に最も影響を与える、最重要ポイントを1つだけ挙げるとしたら、それは何になるでしょうか? 見積でしょうか? テスト(試作)でしょうか?
もちろん見積も重要ですし、テスト(試作)も重要でしょう。ただ最も重要なものを1つだけ挙げるとしたら、それは良質なリードになります。良質なリードとは単なる問合せではなく、顧客側に購入する事情(課題の深刻度、切迫性)がある場合のことです。
なぜ良質なリードが、最も受注率に影響するのか?
なぜ良質なリードが、最も受注率に影響するかといえば、注文は顧客が主体となる行為だからです。
発注を決めるのは顧客であり、売り手ではありません。売り手にできることは、顧客が発注するように促すことであり、それは側面支援に過ぎません。よくある誤解は、何か魔法使いのような営業が、顧客を自由自在に操るイメージですが、それは単なる幻想に過ぎません。
注文が顧客側の行為である以上、最も重要なのはリード(引合い、案件)の質です。顧客側に課題の深刻度や切迫性がない限り、どれだけテスト加工やプレゼンテーションを頑張っても、受注に繋がらない場合があり得ます。逆に少々間の抜けた営業でも、顧客側の事情が切迫していれば、なんとか注文はとれるものです。
営業がプレゼンやテスト加工を頑張り、競争力ある価格を提示することは、受注にとって重要なファクターです。ただ優先順位を考えれば、リード(引合い、案件)が最も重要であり、リードの質を無視することは許されない、ということになります。
多くの企業に共通する問題は、
どこにあるのか?
『売上を増やすには、良質なリードが必要なことは分かります。だからこそマーケティングを重視し、会社を挙げて取り組んでいるのです。ところが上手く行かないのですよ。』
もし御社がこういう状況なら、とても良い状態にあると思います。なぜなら問題を正しく認識し、良い方向に進んでいるからです。問題は最後の詰めが、甘い点にあります。どういうことなのか、典型的な2つの問題パターンをご説明しましょう。
問題パターン1: 表層的なマーケティング
図(展示会マーケティングの問題)を見てください。

これは展示会で見込客を集め、受注するプロセスを模式化したものです。最初に青い帯をみてください。顧客が会場に到着後、ブースに来訪し、名刺交換をします。その後「選別」「アポイント」等の営業活動に移ります。
問題となるのは、青帯の「ブース来訪」の部分です。ここを「ブース来訪」の一言で済ませてしまう場合が殆どなのです。黄色の帯をみてください。青帯が「ブース来訪」で片付けたプロセスを、黄帯では4つのプロセスに分解しています。
Point
- ブースに向かう
- ブース前の通路を歩く
- ブース前で足を止める
- ブース内に入る
展示会で良質な見込客(リード)を集めるには、この4点に対する仕掛けが必要です。すなわち、
Point
- どうすれば、多くの人が自社ブースに向かうのか?
- どうすれば、多くの人がブース前を歩くのか?
- どうすれば、対象客がブース前で足を止めるのか?
- どうすれば、ブース内に足を踏み入れるのか?
この4点の仕掛けがあって、はじめて見込客(リード)が集まります。ところが多くの企業は青帯のように、ここを「ブース来訪」の一言で片付けてしまうのです。
その結果どうなるかといえば、思考の焦点がぼけて、エッジの効いた策を打てなくなります。実際に行うことといえば、既存客にご案内メールを送付する程度に、留まってしまうのです。残念ながら、これでは良質な見込客は集まりません。「ブース来訪」と一言で片付けず、もっと精緻に顧客行動を分解し、一つ一つにエッジの効いた策を打ってください。
ここでは「ブース来訪」を例にご説明しましたが、これはほんの1例に過ぎないことも付言しておきます。この種の問題は、あらゆるパートで起きているのです。
Webマーケティングでいえば、広告運用、SNS運用、SEOコンテンツ、ランディングページ等、あらゆる場面で同じパターンの問題が起きています。またマーケティングだけでなく、営業プロセスにおいても、同様の問題は起きています。
顧客の行動を精緻に分析し、一つ一つにエッジの効いた策を打つこと。この視点をもって、あらゆる受注プロセスを見直すことが、良質なリードを増やすためには不可欠です。
問題パターン2: マーケティングへの過度な期待
もう1つ、重要な問題点を指摘させてください。それはなぜリード獲得を、マーケティング活動だけに依存するのか、なぜもっと営業が自ら新規客を開拓しないのか、という点です。図(営業が行う新規客の開拓)をみてください。

これはマーケティング活動を省き、いきなり営業が新規客にアプローチする新規開拓のモデルになります。キーパーソンを突き止め、なんらかの方法で接触し営業する、という一般的な営業です。
Webマーケティングのように、Webサイトを作り込む手間は不要です。また経費以外に特段の費用もかかりません。特に製造業では、顧客が少数の企業に限定されることも多いですから、即応性のあるリード獲得法として、重要な役割を担います。
しかしながらこの方法はリード獲得が不確実で、運頼みになることが欠点です。また新しい顧客にいきなりコンタクトするのは、精神的に高い壁があります。どれほど優秀な営業でも、精神的な負担と労力を考えれば、なかなか積極的に取り組まないのが現実でしょう。
このような理由から、多くの企業がマーケティング活動にリード獲得を委ねるわけですが、ここで1回冷静に考えてほしいのです。ここまでの話を整理すれば、次のようになります。
- 「営業が行う新規客の開拓」は即応性のあるリード獲得法だが、運に頼る不確実性が欠点である。
- マーケティングは「営業が行う新規客の開拓」の不確実性を、どれだけ確実にできるかが問われている。
- マーケティングより「営業が行う新規客の開拓」の方が確実なら、マーケティングは後回しで良い。
何が言いたいかといえば、物事を進める順序なのです。何かWebマーケティングが当たり前のような風潮もありますが、Webマーケティングは仕組みを作るだけで、結構な時間がかかります。さらにそれを機能させるには、人材育成まで含めると数年を要する作業です。ですのでWebマーケティングは短期でなく、中長期的な視点に立って取組んでほしいのです。
- まずは「営業が行う新規客の開拓」で、良質なリード獲得を目指す。
- そのために何をすべきかは、この後にご紹介するセミナー『コネなしの私が、トヨタ自動車の生産技術にアポをとった方法』で詳しく説明します。
- リード獲得をWebマーケティングで仕組み化するのは、中長期的な視点で取組む。
このように短期と中長期に分けて、戦略を立てて頂くことが重要になるとご理解下さい。以上だいぶ長くなりましたが、ここまでの話を踏まえて、売上開花プロジェクトの内容をご説明します。